トラーパニ 食の伝統
文化の融合地点、トラーパニに伝わる食文化の数々。
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クスクス 北アフリカから伝わってきたアラブ文化
アフリカに一番近い街といわれているトラーパニ。そのため、トラーパニではアラブから伝わってきた料理やドルチェがしばしば見かけられます。
その代表格CousCous(クスクス)。クスクスとは、セモリナ粉(硬質小麦)と水をこすり合わせ(incocciare=インコッチャーレ)、ツブツブ状にしたものをクスクシエラと呼ばれるクスクス専用ナベで蒸し、それにソースをしみ込ませた料理。セモリナ粉から作られるのでパスタの一種に分類されます。
クスクス トラーパネーゼは近海であがった新鮮な魚をたっぷり煮込んで作った魚介類のブロードをあわせるのが伝統。クスクスをセモリナ粉から手作りしている街は、シチリア内でも数少なく、トラーパニにきたら是非試していただきたい一品。ちなみに、トラーパニではクスクスは家庭でも手作りで作られ、フェスタ(キリスト教に基づくお祭り)には欠かせない家庭料理と言われています。
クスクシエラ。クスクスを蒸すためのテラコッタの鍋。
蒸しあがったクスクス
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天日干し 海の塩 古代から伝わる塩の製法
トラーパニからマルサラに向けて走る海沿いの道に、7月~8月にかけて塩の白い小山を見ることができます。そう、ここ一帯は大塩田地帯。ここでは、古代から伝わる製法で、今もなお“手作りの塩”が作られています。
塩の歴史は古く、古代地中海の民、フェニキア人から伝わると言われます。紀元前の話です。ここ一帯は、“風”、“気温”、“湿度”という塩作りには欠かせない3大要素が揃い、その上、地中海はマグネシウムやヨードなどの天然成分が豊富に含まれる、この事実に目を付けたフェニキア人は、理想の地での塩作りを始めました。
塩作りが始められるのは3月20日前後。海にもっとも近く海面と同じ高さの一番目の塩田に、海水を地中海の風を利用した風車を回して引き込みます。(現在は電動のポンプを使用)一番目の塩田で蒸発して塩分を増した海水は、「Acqua Madre(アックア マードレ=母なる水)」呼ばれ、5月中旬頃、2番目の塩田に引き込まれます。ここで更に水分を蒸発させて塩分が高まった海水は、6月下旬頃、収穫用の3番目の塩田に移されます。そして、7月、最終的に結晶化した塩が6~10センチ程度になったら収穫がはじまります。塩水を移動させるのは、次々と海水を引き込んで沢山の塩を作るため。
Salinaio(サリナイオ)と呼ばれる塩職人の手によって塩は収穫され、まず小山が作り上げられ、さらに、機械を使って大きな山となります。塩の収穫は9月下旬まで続き、その後、雨・風・埃を防ぐためのテラコッタをかぶせられ(10月から)、一冬を越し、えぐみやアクが取り除かれます。
こうして手間と時間をかけて作られた塩は、どことなく甘く最高の調味料となるのです。
塩の収穫@8月
冬の塩田
塩の結晶
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マルサラワイン イギリス人によって作られたシチリアの伝統
「マルサラワイン」、皆さん、耳にされたことはありますか?「あ~、料理酒ね。お菓子にも使うわね。」という声が聞こえてきそうですが、いやいや、マルサラワインはここトラーパニ地方では列記とした「飲む為のワイン」なのです。
このマルサラワイン、実は偶然の賜物として作られたのです。1700年代後半、イギリス商人ジョンウッドハウスはシチリア西岸部を航海中、アフリカ大陸からの風、シロッコを受けた悪天候に見舞われ、急遽マルサラというシチリア西岸部の街に避難することとなりました。ここのレストランで偶然飲んだ地ワイン、これが当時イギリスで流行していたポートワインやマデラワインに似ていたため、イギリスで売れるのでは?と考えました。しかし、当時の航海は数ヶ月と長期に渡り、そのまま持って帰ってはワインが腐ってしまう、、、それではアルコールを添加してはどうだろうか?そう、ワインにアルコールを添加したもの、これがマルサラワインの原型なのです。(日本ではアルコールを添加することを「酒精強化」と呼びます)
マルサラワインの原料は、①白ワイン②白ワインから蒸留した添加用アルコール③ブドウジュースを1/3になるまで煮詰めたモスト コット(甘みの添加)④ブドウジュースに蒸留したアルコールを加えたミステッラ(甘みとアルコールの調整)。この4つの材料から、フィーネ、スペリオーレ、リゼルヴァ、ヴェルジネと4種のマルサラワインが作り出されます。(製法はカンティーナ フローリオのもの)
辛口のヴェルジネは、マグロの燻製や魚のアンティパストと一緒に食前酒として、甘口のスペリオーレはカンノーリやカッサータなど、強烈な甘さのシチリア菓子と共に、、、これが最近のシチリアでの流行。
樽熟成されるマルサラ酒
マルサラ酒 2種
マルサラ酒の原料となるブドウ グリッロ種
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マッタンツァ 地中海の古代マグロ漁
トラーパニでは5月下旬~6月にかけて、魚市場で日本ではまず見ることが出来ない「生マグロ」を眼にする事ができます。
ここトラーパニは「マグロ漁」で知られた街。かつては、トンナーラと呼ばれるマグロの加工場が近くの街を合わせ4つあり、カラスミ、オイル漬けなどのマグロ加工品が盛んに作られていました。
トラーパニでのマグロ漁“マッタンツァ”は古代から伝わると言われています。4隻の船で四角く陣取りマグロを追い込んでいき、仕掛けておいた網を引っ張り上げます。マグロが海面に浮いてきたところを銛で刺すのですが、船で囲まれた海(“死の部屋”と呼ばれます)はマグロの血で真っ赤に染まるそうです。かつては、マグロ漁の為に命を落とす人もいたほど過酷な漁だったと言われています。マグロの習性を功名に利用して追い込んでいくマッタンツァ漁が、古代から行なわれていたとは驚きでもあります。かつては1万匹以上も収獲していたと言われるマッタンツァ方式ですが、現在はマグロの数が減ったことと、漁業権などが絡み、1年に1~2回しか見ることが出来なくなってしまいました。
地中海海域でとれるのは「黒マグロ」。5月中旬~7月上旬にかけてトラーパニ付近に回遊してきます。魚市場では、マグロは赤身・トロと部位ごとに分けて置かれ、好きな分だけ購入可能。(20ユーロ(約3300円)/キロ)内臓部分は余すところなく加工されて保存食となります。
保存食の中でも珍しいのは”マグロのからすみ”。からすみと言えばサルデニアの”ボラのからすみ”が有名ですが、トラーパニの”マグロのからすみ”は食通の中でも珍味として知られています。トラーパニの魚市場の近くでは、良質のマグロのからすみが良心的な価格で販売されています。(12ユーロ~/100g)パスタに削って食べても良し、パンに乗せてアンティパストとしても良し。レストランでも味わう事が出来ます。
マグロ漁に使われていた船
マグロを追い込むための網
マグロのからすみ
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ヌッビアの赤ニンニク ノアの箱舟プロジェクトによって救われた幻の赤ニンニク
トラーパニの近くの街、ヌッビアで採れる赤ニンニクは、スローフー協会のプレディジオ(注)にも登録された幻の一品。一度は外国から輸入されたにんにくに押され絶滅に瀕したこの赤ニンニク、地元の人とスローフードが協力して息を吹き返すことができたそう。
ヌッビアの赤ニンニクは、身が赤いのではなく皮が赤いところからこう呼ばれています。ピリットした刺激と独自の香りが特徴。収穫は6月~7月。収穫後、乾燥させ茎(葉)の部分みつ編みにして束にします。季節になると街角でたくさんのにんにくの束を乗せて売っているのを見かけることができます。
この幻の一品を使ったトラーパニ料理の代表格がPesto Trapanese(ペスト トラパネーゼ)。トマト、バジル、そしてこの赤ニンニクをベースとしたペーストは、Bujiate(ブジアーテ)という、トラーパニ近辺でよく作られるねじった形の手打ちパスタと合わせるのが伝統。トラーパニ料理には欠かせない一品でもあります。
(注)スローフード協会により、絶滅寸前の食材として認定された、イタリア各地の伝統食材
街角のにんにく売り
赤ニンニク
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Valli Trapanesi D.O.P 隠れたオイルの名産地
トラーパニ近郊は、隠れたオリーブオイルの名産地。シチリアのオリーブは、強い太陽の下に育つので強い香りと味、と思われがちですが、実際には逆で、優しくナチュラルな味がするのが特徴。青リンゴの香りやトマトの香りのするさわやかな良質のオリーブオイルが作られています。
この地域で植えられているオリーブは、
・Cerasuola(チェラスォーラ)
・Biancolilla(ビアンコリッラ)
・Nocellara del Belice(ノチェッララ デル ベリチェ)
の3種。
トラーパニには最新技術を用いた生産者も多く、手塩にかけて育った良質のオリーブで、高品質のオリーブオイルが作られています。
オリーブの収穫時期は10月下旬から11月にかけて(天候によって異なります)。イタリア北中部のオリーブ収穫に比べると若干時期は早め。この時期、フラントイオ(オリーブオイル精油所)では、1年分のオリーブオイルをつくるのに大忙しの時期であり、1年で唯一オリーブオイルを製造過程が見れるチャンスでもあります。
宝石のようなオリーブ
オリーブの収穫風景
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